減少に転じた中国貿易
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
米中貿易戦争が、米中覇権戦争に転化した2018年。
「大変だ!大変だ!」といわれていますが、どうなのでしょうか?
その前に、中国経済の話。
この国は、統計がいいかげんなので、なかなか経済の実態を把握することが難しい。
それでも、たった一つ中国も「ウソをつけない統計」があります。
「貿易統計」です。
なぜウソがつけないのでしょうか?
相手がいるから。
たとえば、日本の対中輸出額と対中輸入額、中国の対日輸入額と対日輸出額は一致していないとおかしいですね。
だから、中国がウソをつけば、すぐバレてしまう。
それで、貿易統計が、もっとも信頼できる指標なのです。
こちらをごらんください。
<中国税関総署が14日、先月の貿易統計を発表した。
輸出額は2212億ドル(約24兆円)で前年同月比4・4%減、輸入額は1642億ドルと7・6%減った。事前の予想はいずれも増加だったが、輸出は9カ月ぶり、輸入は2年2カ月ぶりの減少で内需の減速が影響しているとみられる。>
(朝日新聞DIGITAL 1月15日)
2018年12月、中国の輸出額は、前年同期比で4.4%減った。
輸入額は7.6%減った。
<事前の予想はいずれも増加だったが、輸出は9カ月ぶり、輸入は2年2カ月ぶりの減少で内需の減速が影響しているとみられる。>(同上)
これ、どうなんでしょうか?
実をいうと、「だからどうだ」と正確にはいえないのですね。
というの貿易統計がどうであろうと、結局中国政府は、「2018年、GDPは6.●%成長した!」と発表するからです。
▼実はやばかった15、16年の中国経済
実をいうと、2015年、2016年の中国経済もヤバかったのです
公式発表では15年6.9%、16年6.72%の成長となっています。
しかし貿易統計を見ると、「ありえない!」と確信できます。
2016年1月13日付、毎日新聞を見てみましょう。
<「15年の我が国の貿易は、複雑で厳しい1年だった」。13日、記者会見した中国税関総署の報道官は、そう話した。同署が同日発表した15年の貿易統計によると、輸出と輸入を合わせた貿易総額は、前年比8%減の3兆9586億ドル(約463兆円)となった。減少は、リーマン・ショックの影響があった09年以来だ。 >
貿易総額は2015年、前年比8%減だそうです。
<最大の貿易相手である欧州連合(EU)向けや日本向けの輸出が減少した影響で、輸出は2.8%減の2兆2765億ドルとなった。>(同前)
輸出は、2.8%減少。
<一方、輸入も、14.1%減の1兆6820億ドルと大幅に減少した。国際的な資源価格の下落で原油などの輸入額が減少したこともあるが、工作機械や自動車部品、液晶パネルなどの輸入も落ち込み、内需の低迷ぶりを裏付けた形となった。>
(同前)
輸入は、14.1%減少!
輸入は、GDP成長率と相関性が高いことが知られています。
そんなことは知らなくても、「貿易総額が年間8%、輸出が2.8%、輸入が14%減って、GDPは6.9%増えたなんて、ありえるのかな?」と普通疑問に思うでしょう。
ちなみに、高橋洋一先生は、2015年のGDP成長率は、「マイナス3%程度」と断言しています。(例、「日本はこの先どうなるのか」82p)
ちなみに中国、2016年の貿易総額は、前年比で6.8%減少。
輸出は7.8%、輸入は5.5%、それぞれ減少しました。
これで、GDP成長率は、6.72%????
ありえないですね。
これは何だったのでしょうか?
皆さん覚えておられるでしょうか?
実をいうと、「米中覇権戦争」は2015年に始まったともいえるのです。
なぜ?
2015年3月に「AIIB事件」があった。
イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、オーストラリア、イスラエル、韓国など、いわゆる「親米国家群」が、アメリカの制止を無視して、中国主導「AIIB」」への参加を決めた。
つまり、「親米諸国」ですら、「アメリカより中国をとった」。
この衝撃は大きく、以後オバマさんは、ひどく反中になりました。
オバマさんは、ロシアとプチ和解し、シリア、ウクライナ、イラン問題を沈静化させた。
そして、中国との戦いに、エネルギーを集中しはじめた。
それで、15年、16年、中国経済はひどい状況になってきた。
ところが、トランプさんが大統領になった17年はどうだったのか?
これは、北朝鮮が暴れたおかげで「休戦状態」だった。
それで中国経済も元気を取り戻した。
唯一信頼できる貿易統計は?
<中国税関総署が12日発表した2017年通年の貿易統計(ドルベース)によると、輸出は前年比8%増の2兆2634億ドル(約250兆円)、輸入は同16%増の1兆8409億ドルだった。輸出、輸入ともに増加するのは14年以来3年ぶり。>
(日経新聞2018年1月12日)
こう見ると、2017年の中国経済は、よかったのでしょう。
18年通年ではどうだったのでしょうか?
<18年通年の中国の輸出は全体では9.9%増と7年ぶりの高い伸びを記録。輸入も15.8%増加した。>
〈ロイター 2019年1月14日)
こう見ると中国経済、通年では悪くなかったのでしょう。
まとめるとこうなります。
・2015年3月、AIIB事件で、米中覇権戦争が開始される
・2015〜16年、その影響で、中国経済は苦境に
・2017年、トランプが大統領になり、中国と休戦
・結果、2017年、2018年、中国経済は勢いを取り戻す
・2018年後半、米中貿易戦争が覇権戦争に転化
・それで18年12月、中国は輸出入とも減少に転じる
こうなります。
今後はどうなっていくのでしょうか?
トランプと習は昨年12月、「3か月の休戦」で合意しました。
それで3月まであまり動きはないでしょう。
しかし、アメリカ側に中国と和解する気はなさそうで、もっと悪くなっていく可能性が高いでしょう。
去年から警告しつづけていますが、危機に備えましょう。
中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義
- 作者: 北野幸伯
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2007/09/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 2人 クリック: 15回
- この商品を含むブログ (14件) を見る